「メタボ」という言葉は、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「メタボリック症候群(メタボ)」とは、内臓に脂肪が蓄積し、高血糖、高脂血症、高血圧が引き起こされる状態で、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気の原因になります。

この50年間、わたしたちヒトのライフスタイルは自動車の普及等による運動量の減少、
脂質・糖質摂取量の増加などにより大きく変化し、摂取カロリーが消費カロリーを大きく上回るようになりました。
その結果、脂肪を蓄える細胞(脂肪細胞)は大型化し、肥満の人の爆発的な増加へと繋がっています。

ライフスタイルの変化により過去50年で脂肪を蓄える脂肪細胞が大型化しました

日本でのメタボ人口は予備軍の人も含めて1,940万人と言われています。その診断基準は
1.ウエスト周囲(内臓脂肪の蓄積;男性85cm、女性90cm以上)
2.血糖・血中脂質・血圧の3つのうち2つ以上の項目が基準以上
とされています。

内臓脂肪は、溜まりやすく減りやすいという性質を持っていますので、まずは食生活や運動を改善することで内臓脂肪を減らすことが薦められています。

同じように食生活・運動に気をつけていても、太りやすい人・太りにくい人がいます。
最近、その原因の一つが腸内に棲む細菌(腸内細菌)の違いであることが分かってきました。

調査研究より、肥満の人と肥満でない人の腸内細菌が異なっていること、肥満の人の腸内細菌を肥満でないマウスに移植すると、肥満でなかったマウスが太ることが分かりました。

また、肥満の人の腸内細菌には、善玉菌であるビフィズス菌が少ないこと、乳児期にビフィズス菌の少なかった子供は肥満になりやすいことも報告されています。

このように、腸内細菌がわたしたちヒトの太りやすさに密接に関係している事実が、近年次々と明らかになりました。

それでは、腸内細菌はどのようにしてヒトの太りやすさに関係するのでしょうか?
腸内細菌は、ヒトが食べた物を栄養源にして生きていますが、栄養源を利用する際、様々な物質を作り出します。
実は、そんな物質の中でもビフィズス菌などの善玉菌が作り出す短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸など)には、ヒトが太るのを防ぐ働きがあることが分かってきました。

ヒトは食事をすると、血液を介して食事中のエネルギー(例えば糖分)を筋肉などのエネルギーを消費する組織へ運び、消費しきれずに余ったエネルギーは脂肪細胞に蓄える仕組みを持っています。
メタボでは、食事量過剰や運動不足などが原因で、摂取カロリーが消費カロリーより多い状態が恒常化しており、脂肪細胞へエネルギーを過剰に蓄えている状態と言えます。
これに対し、腸から吸収された短鎖脂肪酸は、脂肪細胞へエネルギーが蓄えられるのを防ぎ、逆に筋肉で消費されやすくする働きを持っていることが近年明らかにされました。

また、腸内の短鎖脂肪酸は、大腸の細胞を刺激して「グルカゴン様ペプチド(GLP)-1」というホルモンの分泌を促します。
このGLP-1というホルモンは、インスリン分泌を刺激することで血糖値を下げたり、食欲を低下したり、脂肪細胞に作用して脂肪の蓄積を抑制したりするなど、メタボを改善する働きをします。

ビフィズス菌などの善玉菌が腸内で作る短鎖脂肪酸が、わたしたちヒトがメタボになるのを防ぐ、いわばストッパーとしての役割を果たしていると言えるのです。

腸内細菌からメタボを改善するためには、ストッパーとなる短鎖脂肪酸を増やすことが重要です。
Vol. 1でも紹介したように、ビフィズス菌BifiXは、おなかでよく増えるので、短鎖脂肪酸を増やす力も強いことがわかっています。

マウスを使った私たちの実験では、肥満のマウスにビフィズス菌BifiXを7週間毎日継続して与えると、内臓脂肪の蓄積が抑えられることが分かりました。一方、おなかで増える性質のない一般的なビフィズス菌(ロンガム種の基準株)を与えても、効果はありませんでした。

このマウスの腸内を調べると、ロンガムを与えたマウスよりもビフィズス菌BifiXを与えたマウスの方が、ビフィズス菌の数や酢酸の量がはるかに多くなっていました。

さらに、ビフィズス菌BifiXの摂取により酢酸の産生量が増えた結果、メタボを抑える働きのある大腸のGLP-1も増えました。
これらのことからビフィズス菌BifiXは、おなかのなかで増えて、メタボのストッパーである短鎖脂肪酸を作り、その結果GLP-1などの抗メタボホルモンを増やしてメタボを改善すると考えられました。